【レースまで】
この大会への出場を決心した時、ワタクシは熱い思いを秘めていた。
‥2年前、2012年2月5日に行われた「あの」"別府大分毎日マラソン"のラストスパートで、ワタクシは右フクラハギを負傷した(参考:※番外編 回顧録)。慢性の右アキレス腱炎に起因した肉離れを起こしたのだ。その後は、この二つの故障で一年半以上スピードを出して走れずにいたのだが、それがようやく治まり、スピード走が出来そうな兆しを感じたのが昨年2013年の秋。2014年の"別府大分毎日マラソン"の申し込み締め切りが近づいていた頃だった。
本来ならば、実際にスピードを出して走れるようになってから次のレースを考えるべきなのだろうが、昨シーズンを怪我で棒に振った屈辱感と焦燥感そして、うずうずしていた"スポ根!"を再点火させ早く我武者羅に頑張ってみたいという思を抑えられずにいたのだ。そして復帰第一戦を「あの」"別府大分"にしたかったのだ。そんな思いで、見切り発車のような形で"別大"へ申し込んだのだった‥
もちろん、「"スポ根!"を再点火」させるには、それなりに高い目標が必要だ。目指したのは、
「自己ベスト更新!」‥「あの」2012年"別大"で出した2時間47分19秒の記録更新だ。それには、「あの」シーズン同様のトレーニングが必要になる‥楽では無い。いや、厳しい‥だからこそ、挑戦したいのだ!
申し込んだ後のトレーニングは順調とは言えなかった。ブログ(シリーズ"別大"への道!)に書いてきたように11月に負傷した右足関節捻挫のため、その後のトレーニング計画と大会の目標変更を余儀なくされてしまったが、その時々の状態に合わせて適切に対応してきたと思う。特に、大会前の1ヶ月は定番のメニューとは違う臨機応変なトレーニングで、巧くレースに照準を合わせられたと自画自賛している。だから、レース前の準備期間を自己評価すると、怪我が大きな減点になってしまったが60点のギリギリの合格点を与えたい。
そんな状態で迎えた今回のレースでは、
「3時間を切ること!」を目標にした(当初は2時間47分切りだったが‥)。そして、故障から完全復活出来るのかを確認したかった。
【レース】
本気で走るフルマラソンは2年前の"別大"以来。前の夜は緊張のため、浅い眠りを10回前後繰り返しただけで寝不足だった。しかし、体調は良さそうだ。
・右アキレス腱はこの3ヶ月ほど無症状。
・11月に負傷した右足関節捻挫は完治している。
・心配なのは「あの」右フクラハギの古傷だけ‥
だが、これは走り出さないと様子が分からない。しかし、ある程度の症状が出るのは覚悟している。
この三つの故障以外のトラブルがレース中に発生することも無きにしも非ず。練習中にはハムストリングスにハリ感が出たし、靴擦れ、腹痛、腸脛靭帯の痛みや不整脈が出たり‥レースでのトラブルはいくつも経験している。
練習では25km走しかしていないので、30km以降が不安だ。ブランクが1年あるし、それだけ年齢も増えている。当然、体力も‥不安は尽きない。
スタート前に出来るのは、祈ることだけだろう。
戦略は、4'15"/kmペース(=フル2:59'20")を基本にして、前半の15kmまでに1分~1分半を貯金し後半の失速はその貯金でカバー出来る程度に収めるというものだ。
春を思わせる暖かさで、気温も湿度も高かく濃い霧が出ていた。風は気にならない。予想外の気象コンディションで、用意していたアームウォーマーやサングラスは不要になった。手袋も必要無かったが、サプリメントを携帯するためのポケット代わりに着用した。
昨夜の緊張とは裏腹に、スタート地点に整列しても興奮してこない。気合もイマイチだが、逆にリラックス出来ている 。レースまでの準備が自己採点で60点のせいかも知れない。‥最高の走りはとっくに諦めている‥
しかし、集中力はあった。体の細部までチェックして体調を観察しているし、サプリメントを摂る地点や、レース中の注意点を繰り返し確認している。
そして、スタート!
合図からスタートラインまでは
・13秒←訂正:テレビの録画で確認したら8秒後にはスタートラインを越えていました
走り出しは、どうしてもペースが速くなる。下り気味のコースであり周囲は2時間50分を切る実力のランナーばかりなので、流れに乗ると予定よりも速いペースになってしまう。
ペースは感覚に頼った。時計はあまり気にしない。1km毎の距離表示の見落としも多かったが、もともと気にしていないのだ。なぜなら、その方が正確に体調を観察できると考えたからだ。そうは言っても5km毎のラップタイムはチェックする。
・5km-20'05"
スタートの「うみたまご」から別府方面へ向かい、9km地点でUターンするが、それまでは緩い下りが多い。霧で視界は250mぐらいだろうか?コースのカーブが分かりにくところもあったが、最短距離を走るようにライン取りした。路面が濡れているので、ラインなどのペイント部分が滑りやすいので注意しながらフォームに気をつけて、脚にダメージを与えないように心がけた。
汗と霧で顔が濡れる。隣のランナーを見るとまゆ毛やまつ毛に霧が白く付着している。
折り返すと登り坂になる。フォームとピッチを変えて対応する。
・10km-20'27"
別府駅周辺は特に沿道の応援が多い。有り難いことだ。ハイタッチを求める子供たちもいたが、競技に集中した。
ここまで、体に問題は無い。有り難いことだ!問題が無いどころか、良好だ!調整は成功だった。しかし、距離に不安があるので自重する。
「タイムの貯金は体力の借金」である。この言葉を思い出しながら体とペースを相談するが、無理なペースでは無い。なのにラップタイムは‥
15km-20'15"
予定(5km-21'15")よりもかなり速く走っている!?
「タイムの貯金は‥」心配になって、体を観察し続けるが問題無い。
飛ばし過ぎには注意するが、無理にペースを落とさないことにした。
「これならば大丈夫!」と感じたからだ。
スタート地点の「うみたまご」に戻り通り過ぎる。スタート前に激励してくださった方々を思い出すと励みになった(TBSのアナウンサーにも激励して頂いた)。
広いコースだ。片側3車線、時速60km制限の道路は、カーブで左右方向の傾斜が大きい。自転車のバンクを想像させる。霧の中をコースの先を見ながら最短距離のライン取りをする~後方を確認し、他のランナーの走路を封鎖したり接触しないように注意する~
給水前に携帯した最初のサプリメントを摂り、気温が上がってきた感じがしたので、ウェアーの胸のファスナーを下げた。
20km-20'35"
アップダウンとカーブにフォームを合わせる。前足部で路面を叩くように接地するが、右フクラハギの古傷には負担をかけることになる。古傷を気遣いながらもフォームを崩さないようにあえて古傷に負荷をかける。
「頑張れ!右フクラハギ!!」っと、励まし祈る。そして、感謝!‥まだモッテいる‥
中間地点を過ぎても体にトラブル無し!
「このまま続けろ!」っと言い聞かせる。
集中力も途絶えていない。コースの変化と体の変化を細かに観察し続けている。
「技術で走れ!」
「強気で走れ!」
淡々と走り続けた。
25km-20'33"
2度目のサプリメントを摂る。比較的平坦で走りやすいコースの中ではポイントになるアップダウン、弁天大橋を渡る。登りでは腕を強く振り、下りではブレーキをかけない接地で脚のダメージを軽くした。
ボチボチ歩き出す選手が目立ち始める。
「自分は大丈夫か?」改めて体を観察するが、ここまで来て疲れが出ない訳が無い。残りの距離とダメージを天秤にかけながらペースを考える。
陽が当たってくる。手袋を外して腰に挟んだ。そして、給水では脚に水を掛けるようにした。
28kmあたりで右フクラハギがツッパリ出す。
「ここまで良く耐えたネ。」
「だけどまだ叩き続けるヨ!」
‥フォームを崩さないように重心と接地を再度チェックする。
腰は落ちていない。前足部で路面を叩いている。
竹馬で走るイメージでフォームがまとまる。
30km-20'24"
ここまで来ると残りの距離のカウントダウンが始まる!
そして、気持ちと体との間にギャップが出始める‥頑張っているのにペースが落ちてくる。
「勇気」と「向上心」という、いつもの言葉を頭の中で繰り返す。
~ワタクシはブログの中でも「心技体」という言葉をしばしば使うが、「勇気」は「心」。「向上心」は「技」にも通じるところがあると思う~
そして、右手首のリストバンドを意識する。今回も例のリストバンドをはめて走っている。気合が入る!
~キツイ。だけど好きなことをしての上でのキツさだ。被災された方々の苦しさ、キツさとは根本的に異なる。だから、好きでやっているキツさに負けることは出来ない。被災された方々の頑張りはテレビなどで沢山伝えられてきたが、そのたびに今を大事にしなくてはいけないと教えて頂いた。
レース当日の朝も、テレビで宮城県の高校生がボクシングで頑張っている姿を観た。「心技体」の「心」の部分では、彼らは突出していた。そんな姿を見せられたら、ここでキツさに負けてはいられない~
色んな感情が湧いてきて涙が溢れてきた。興奮状態なので感情的になりやすい。顔がクシャクシャになっているが気にせずに走り続けた。苦しかったけれど、今走っていることに感謝して更に追い込んだ。‥なのにペースが上がらない‥でも諦めずに続けた。
35km-20'59"
この状況になるとタイムは関係無い。自分の力をどれだけ発揮出来るか、どれだけ燃焼しきるか、どれだけ強く厳しくなれるかだ。
「気合」と「根性」しか無い。
‥しかし相変わらず脚が動かない。自分を罵倒しながら、励ましながら、褒めながら、とにかく脚を動かすように努力する‥
40km-21'26"
カウントダウンもラスト2km、エネルギー産生は無酸素運動の領域が増えてくる。呼吸にあえぎ声が混じり出す。ここまで来ると、周囲のランナー達はワタクシと同レベルだ。だから絶対に負けられない!
「ここからは誰にも抜かれないゾ!」
「15m以内のランナーは必ず追い越してやる!」
トレーニングのインターバルで心臓が口から飛び出すのではないかと思いながらも頑張った場面を思い出す。
「出来るんだから、やれ!」っと自分に発破をかける。
リストバンドを感じる。
「前のランナーを追い越せ!」
競技場に入る。
「お前の見せ場だろ!」
元々、短距離走の方が得意な自分に鞭を打つ!
あえぎ声が大きくなる。
抜く!また抜く!そして抜く!
「全部出しきれ!」
まだ抜く!!!
‥‥ゴール!
42.195km-9'11"//total-2:54'11"
フィニッシュ後、四つん這いになったまま動けなかった。あえぎ声が治まるまでしばらく時間がかかった。
全部出し切った‥ワタクシのその時点での精一杯だった。
頑張れたことに感謝する。
そして、大会関係者の方々、応援して頂いた方々、一緒に走った選手の方々に感謝!
有り難う御座いました。
右フクラハギの痛みを慰めながら、復活の手応えを噛みしめていた。
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あっ晴れ! (月曜日, 10 2月 2014 09:56)
勇気をもらいました!
ぴ~助 (水曜日, 26 2月 2014 22:39)
これを読むと燃えてきます。
モチベーション上げたい時に読み直しています。
3/2の篠山ABCマラソンで、自分も精一杯頑張るつもりです!
krt-jog (木曜日, 27 2月 2014 22:07)
⇒あっ晴れ!さん、ぴ~助さん、
コメント有り難うございます。誰にも注目されていないけれど、自分の世界ではこんなワタクシでも主人公です。ちっぽけなストーリーだけど少しでも多くの方に知ってもらいたいと思って書きました。
読んで頂き、有り難うございました。
少しでも前向きな何かを感じて頂けたら嬉しいです。