“佐渡国際トライアスロン”は、毎年9月の第一日曜日に開催される。そのため、7月後半から8月の猛暑の中でレースに備えてトレーニング量を増やさなければならないので、調整が難しい。
今年は例年以上の猛暑だったのと、右アキレス腱炎の痛みが治り切っていなかったので、練習量を稼げずイマイチ気持ちの盛り上がりを欠いて大会に臨むことになった。
Aタイプ:swim-3.8km bike-190km run-42.2km
1991年の第3回大会に出場してから、今回で9回目の挑戦である。
大会前から台風が北上していたので天候が心配だった。大会前日の8月31日(土)の競技説明会の後、夕方に短時間に凄まじい豪雨が降ったりして(すぐにやんだが)天候が良くならないことは確実だった。
当日の9月1日(日)、午前2時に起床すると雨は止んでいた。天気予報も曇りだったので一安心。
ホテルの八幡館から会場までは約4kmだ。朝食を摂り準備をしてから会場へ bike で向かった。まだ、真っ暗でライトを点けても路面が良く見えなかった。
4時30分からのボディーマーキングは一番乗りグループ。速やかに済ませて、体育館でゆっくりストレッチ。そして日焼け止めとワセリンを塗る。
トランジッションエリアに移り、準備をしていると‥
「波が高いよ‥」
「swimは無理でしょ?」
‥
といった声が聞こえてくる。
会場の放送で、
「5時15分に競技開催についての最終決定をする」
っとアナウンスが流れる。
そして‥
「競技は行うが swim は中止。Aタイプは7時に bike スタート‥」
っと放送が繰り返された。
宮古島に続いての swim 中止だ。
残念だが、ほんのチョット安心もしていた。
swim スタートはワクワクするが、恐怖感もあるからだ。
‥だけど‥実は、最終調整では swim が好調だったので期待していたし、この大会のためにウエットスーツを新調していたのだ!
ガッカリ感も当然あり‥もともと、気持ちが乗り切らないところもあったので、“気合”がすっかり抜けてしまった。
トランジッションで補給食を食べる。swim スタートだと、満腹では泳ぎずらいが bike ならばある程度は平気だ。ソックスを履く。run の時に履くはずだったが、swim が無いから bike から履くことになる。
そして、座り込んで待機。
やがて、
「bike はレースナンバー順に3人づつ5秒間隔でスタート‥Aタイプは6時30分に集合‥」
と、アナウンスが流れてスタートがイメージ出来るようになった。
「集団走行になりそうだな‥」
っと想像する。
スタートまで時間が空いてしまったが、応援に来てくれた身内と話をしたりしているうちに、リラックスできて気持ちが盛り上がって来た。
そしてスタートに整列する。
アナウンスではレースナンバー順に3列に並ぶように言っているが、選手も係りもノロノロしていてきちんと整列出来ない。
集合時間も過ぎているのに、早いレースナンバーの選手がこないから後ろの選手も整列できない。
イライラ! <`~´>!!
スタート前はただでさえカリカリするのに、時間に集まれない選手と仕切れない係りに余計カリカリしてしまう。
やはり気持ちが弱いのだろうか?
そうこうしているうちに、大雑把なナンバー順でスタート!
ルーズだ!こういうのって嫌いなのであるが仕方が無い。
カリカリしながら bike を飛ばす。お陰でアドレナリン全開だ!
心配していた風は無かった。集団走行にもならない。意外だったが助かった。一人で練習しているので集団走行には慣れていないし、そもそもルール違反だ!
swim が無かったので前半から飛ばし気味に走る。平地は35~37km/h で走ったが、無理している感じは無かった。
佐渡の bike コースは坂が多い。ワタクシは登りが遅い!平地と下りではそこそこ走れるのだが、登りではドンドン追い抜かれる!
run では登りに強いのだが、bike の登りは何故か弱い。そもそも練習もしていないからなぁ。当たり前だ。
f(^_^;)
佐渡の応援は年配の方が多い。ゴザを敷いて旗を振ったり鳴り物を鳴らして応援してくれる。まるでお祭りのようだ。なるべく手を上げて声援に応えながら、また景色を楽しみながら走った。
そして前半の難所、岩谷口を過ぎてからの上り坂に差し掛かる。100mほど一気に登る坂道だ。通称“Z坂”!途中にUターンが2か所入る。
そしてここでは“名物おばちゃん”が声援を送ってくれる。
「頑張れ!頑張れ!」
「田んぼの中で待ってるぞ!」
っと、通る声を送り続けてくれるおばちゃんがいるのだ。
毎回のことである。有り難い!
「おばちゃん!いつも有り難う!また後でネ!」
と応えて登り続ける。
“田んぼの中で‥”これは
「run コースでまた応援しているから‥」
を意味しているのだ。
大野亀~二ッ亀~鷲崎で大きアップダウンを2つ乗り切って72kmを過ぎる。登りの途中で踏み込んだ時に右アキレス腱が痛んだが、大した痛みでは無かった。取り敢えず大丈夫そうだった。
脚はまだ動いているが、先が長いのでどこまで持つのか不安はあった。
小雨が降り出しサングラスが曇った。細かなカーブとアップダウンを繰り返しながら、他の選手と抜いたり抜かれたりを繰り返す。
登りに強い選手。下りで慎重になる選手。平地で速い選手‥
各選手の特性が表れるので面白い。
両津港に近づき100km地点辺りだったかな?集団に飲み込まれた。
ドラフティングはしたくないが、大きな集団でバラケそうにない。何度も無理して先頭に立ったが、長くは続かない。それでも何とか前へ前へと出ているうちに、集団が解けて来た。
5km以上かかったかもしれない。
いつの間にか雨はやんだ。小佐渡に入るとここでも風が無い!
いくつもの入り江の小さな集落を通り過ぎる。小さな平地の集落と集落とは山で境されている。だから、登って下って集落、また登って‥を繰り返すのだ。似たような街並みなので、同じ場所を走っているような錯覚に陥ったりしていたが、何度も出場しているうちに少しは見分けがつくようになってきた。
また、初めて出た頃よりも道路が整備され、はるかに走り易くなっている。滑らかな路面、広げられた道路、トンネルでカーブとアップダウンが無くなる‥
初出場から、もう22年になる。いろんな記憶がよみがえり懐かしさを感じる。
ここでも抜いたり抜かれたりを繰り返しながら、第2の難関小木からの登り坂に近づいて行く。
小木港、161km。ここまで、アベレージスピードは30km/h以上を保っている。しかし、ここから登りになるので
「トータルで30km/hを保つのは難しそうだ‥」
などと考えながら、ギシギシとペダルを踏みつけた。
やはりワタクシは登りが遅い。ドンドン抜かれるが、少しは追い抜いた。
ひたすら登る。ひたすらこぐ。こぐしか他に方法が無い。
がまん、ガマン、我慢‥
ようやく下りになると、別人のように速くなる!
子供の頃にスキーをしていたせいか、コース取りやコーナリングの感覚がイイようだ。
それに、自慢できるメカ!bike は安い方だが、ハブだけは“デュラエース”だ!
良く回る!
さすがシマノ!
さて、そしていよいよ最後の平地だ。どれだけ脚が残っているか心配だったが、30km/h は出せていた。
ワタクシとしては合格点だ!
ラスト4km 地点にあるホテル“八幡館”。ここで身内の応援を受ける予定だが、はたしているだろうか?
約束通りに指笛を“ピッ、ピ~”と鳴らして合図すると、ちゃんと視線を合わせて声を掛けることが出来た。
bike フィニッシュが近づく。無駄なドリンクは捨てて、少しでも軽くする(登りでも同様にしたが)。商店街に入る手前の橋で気のせいだろうか?誰かに呼ばれたような気がした!?
とりあえず、手を上げ少し振り返ったが、聞き違えか?
降車地点の手前で、減速しながら手で太ももをプルプル振って軽くマッサージ。ダメージはどうかな?
(bike-6:27 avr-29.4km/h max-67.7km/h)
トランジッションで、ランシューズに履き替えながら、携帯電話の保存メールを送信する。
「件名:バイク終了」
「本文:もうじきランです!」
補給をしてから、ゆっくりと走り出した。